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[映画]あるスキャンダルの覚え書き


監督 リチャード・エア
出演 ジュディ・デンチ、ケイト・ブランシェット、ビル・ナイ、アンドリュー・シンプソン、トム・ジョージソン、マイケル・マロニー


先日知り合ったばかりの方と映画の話で盛り上がりました。その方からお電話でこの映画誘われましたが、あの時毎週ご主人と映画に行くと言っていらしたので、「ご主人は?」「彼が見ても面白くなさそう。」
「全くその通りだ!男性には見せたくない。」と、思いました。
でも女性にとっては・・・!殆ど女性で埋め尽くされた映画館で見終わった時、期せずして多くのため息が漏れたのを聞きました。
そして、その方も私も本当に深いため息をついていました。
映画の中の二人の女性、ジュディ・デンチとケイト・ブランシェットが演じたバーバラとシーバの中にどなたもいくばくかの自分を嗅ぎ取ったからではないか?と思ってしまいました。
どちらの女性に傾いても、程度の差こそあれ、女なら多分誰しもが映画の中のシチュエーションなり、感情なりに覚えがあるでしょう。もしその人が孤独を知っていたら・・・受け入れられなかった何時かの記憶があったら・・・そして、どんな社交的でどんなに愛されてきた人でもきっと何らかのバーバラとシーバに思い当たるのではないかと思いました。
嫉まれた人も、嫉んだ人も。執着した人も、執着された人も。受け入れられた人も、拒絶された人も。一人暮らしの人も、家族に取り囲まれている人も。これは私がどっちの側の人間であるということではないのです。不幸なことにこの女性を演じた二人の女優さんは余りにも上手かったので、女の性がむき出しに描かれすぎたのではないかという気すらして恨めしい。いやぁ、怖かったなぁ・・・と言うのが実感でしょうか。えぐられた感じですよ。
人はどれだけ孤独だったとしてもそれに慣れることも狎れることも出来ないのだと思い知りました。バーバラは過去に執着した人を“病気”にしているのに、又執着したシーバを追い込んでこんなスキャンダルに、そしてその後も又同じ金髪の弱々しい人に擦り寄っていく・・・学ばないというか、もうその性としか言い様がないのですが、その性こそは彼女の孤独だった人生が彼女に付与したものだと思うと哀れです。ジュディ・デンチさんの厳しい顎の線と容赦の無い目の光がそれをものの見事に表現しつくして怖い。あのヘンダーソン夫人の愛すべき頑固さとは全く違ういこじさを見せていましたね。微塵も、これっぱかしも愛される何かを持っていませんでした。
そして一方のシーバもあれだけ傍から見れば問題はあっても生きていくのに不足を言っては罰が当たる?かとも思われる状況下でも満たされない空虚を抱え込んでいる。誰かから影響を受けて塞ぎたい穴を持っていてその誰かから流され易い性を持っているとも言えるのかな?過去に30歳も?年上の夫に充たしてもらい、今少年に、そしてバーバラにと・・・。そして又夫の下に塩垂れて還ってゆく。
永遠に彼女もこの循環を続けそうな哀れさです。ケイト・ブランシェットさんが甘い惨めさ弱さをその姿いっぱいに美しく表現して悲しいくらい愚かです。ガラドリエルで表現した尊厳の欠片も見せません。
そして自分の中にある何かを顕微鏡で覗き込めば彼女たちと同類の欠片が私の中にもしーんとしてあるのです。それはやはり拡大して見たいものではありません。その気持ちに行き当たった時あのため息が洩れたのです。初めての方と一緒に見るには心底疲れる映画でした。行くならお一人でどうぞ!

          

           

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