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[本]赤朽葉家の伝説

桜庭一樹著


山陰の製鉄業で財をなした赤朽葉家の女性3代の物語・・・と、まぁ簡単に紹介すればこうなるのだろうか。この作者に初お目見えです。この名で女性作家らしいです。だけどそのまま男性の作品であっても構わない骨太です。
読み進みながら囚われていったのは、不思議な既視感でした。
確かに、たみに見初められて赤朽葉家に嫁入った万葉の少女時代には全く私の人生と重なるところはありません、紙一重も。それなのにこの懐かしい知っている世界は・・・と思って、私の知っている時代の
提出の仕方?時代の切り取り方、その非常に淡々として視線を送る場所の揺らぎの無さが見せるものかもと思いました。私の母の時代から私の子供の時代までが舞台なのですが、太古の出雲の物語だといわれても頷いてしまいそうです。選んだ土地がらのせいかも。そして「もののけ姫」に通じる世界も感じさせて、普遍の時代を作ることに成功したのかも・・・
母の時代、そうそう!私の時代、そうそう!そして子の時代、そうそう今こんな感じかも!
絵巻物を繰り広げる感覚で確かに過ぎてきた時代を振り返ってしまったようです。というか、ああそうだったと、納得の行く直前に万葉の不思議な少女時代やその千里眼の怪しさに私の足元が揺らいで、不思議な既視感に繋がったのかもしれません。その上で遅ればせに通り過ぎてきた時代を思い返したのかもしれません。
千里眼奥様の万葉、族上がりの売れっ子漫画家毛鞠の横を、暗いはかない傍流のように流れる愛人と娘の生涯・・・この2代の4人の女性の静かな語り口で語られる激しさが非常に印象的でした。
そして瞳子の時代。サスペンスを取り入れても何処か冷めて投げ槍ですべきことがまだというか既に無いような不確かさ。そう、そうかもしれない・・・と、
妙にふわふわとそれと自覚しないままで見た夢のような我等が時代!
嘘のような、しかし妙にリアルな、既視感に付き纏われながら、それでもとても面白く読めた3代記でした。やっぱり!時代って女で回っているのかもねぇ・・・なんてね。
この作品にでてくる男たちの存在感の無さは、まるで宙を浮いていた片目の男ほどのものでしたでしょ?

          

           

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