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[本]失われた町


三崎亜記著


となり町戦争」を読み終えて、この人の作品何か他にないかしら?と図書館で調べて申し込んで待つこと久し・・・なんと連休直前に届くのだもの・・・この連休は夫の里帰り兼趣味旅行で8日間も車の中。電車の移動なら本を読む暇もあろうってものだけど、なぜか車の中では読めないなぁ・・・これが車旅行の最難点。当然待たされたってことは待ち人わが後ろにも居たりーということで図書館は延長は効かない。フットバシ読みでしたが、どっちにしてもこの本はフットバシ読みになりました。面白くて!オモシロクテ!おもしろくて!!もう一度予約してもう一度読み直します。だから?とりあえずの感想です?
「面白くて!」と、まずは書きましたが、それは「興味深くて」に置き換えなければなりません。決して痛快娯楽劇風の面白くてではないからです。
この作者は「となり町戦争」で私に与えたインパクトを「二匹目の泥鰌」を期待した私に丸々と太った噛み応えのより充実した泥鰌にして投げて寄越した!って感じです。
今度は町が町ぐるみ消えてしまうんですよ!30年に一度の現象ですって?
理不尽は理不尽なりに・・・というか、意表を突く設定にも関わらず、普遍の人間の逞しさを希望を書きつくしてくれているという感じです。しかもその過程はなんと言ったらいいのでしょう?
実に「面白く」読ませるのです。
「となりまち戦争」を思わせる乾いた文体、利用される役所言語?硬質な記述の中にてんこ盛りに盛られたウェットな情感。これこそがこの作品の基本にある魅力だと思いましたが、物語としても筋立ての面白さが根幹にしっかりとありました。
私はべた褒めしているつもりなのですが、そうなっているでしょうか?5月の始めにして今年の私の最高の一冊になりました。
「理不尽な消滅」に抗って登場する全ての人物像が好ましく、作者が根幹に持つ優しさが反映しているのだと思わされました。消滅管理局という組織にも、全く違う存在のように思われる時々挟み込まれる居留地にもなぜか現在の私たちの社会を強く感じさせられました。
でも、読んでいる間中私の心に去来したのは私が失ってきた多くの者たちでした。亡くなった母も、舅も、友人も、諍いして失った者も、執着していた過っての様々な物どもも・・・、次々に痛みとして上って来ましたが、管理局で戦う人々やその周辺で傷みながら抗う人々に感情移入して読み進むうち不思議なくらい穏やかな気分になっていきました。私も抗ってもいいのですが、受け入れてもいいのです、泣く時は潔くきっぱりと泣いたっていいのです。
「恐れすぎてもならず、侮ってもならない」姿勢って人生で一番大切な戒めなんじゃないでしょうか。何事に対す時にも、もっともそれが出来れば人生の達人ですけれど、頭にこの言葉を置いておくだけでもきっといいよと思います。
この本何より章ごとの題が内容の文章の硬さに反比例するように古風に潤って美しいのが嬉しかったですね。章題だけ声に出して読んでみて御覧なさいって言いたいくらい。
風待ちの丘、澪引き(みおびき)の海、鈍(にび)の月映え、終の響き(ついのおとない)、艫取りの呼び音、隔絶の光跡(しるべ)、壷中の希望(こちゅうののぞみ)
硬軟、静動、乾湿、情理この作家はバランスもいいのです。
それにしても書きたいことがあったとしてどうすればこんなシチュエーション思いつくのでしょう?隣町同士の戦争にしても、30年毎の町ぐるみの消失現象にしても?理不尽な宿命と希望を載せる舞台の作り方が凄い!
ただ急いで読んだためか時間経過の前後がちょっと混乱してしまった。丁寧に読みたいところです。
「となり町戦争」は映画化されましたが、見損ないましたというか見たくなかったのかも知れませんが。どう映像化したのかとちょっと不思議です。この作品も映像化難しそうですが、映画化されるんでしょうかね?三崎さんには他に「バスジャック」という作品があるようです。図書館に申し込んでおきましょう。

          

           

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