[映画]敬愛なるベートーヴェン
監督 アニエスカ・ホランド
出演 エド・ハリス、ダイアン・クルーガー、マシュー・グード、
芸術家を主題にした映画はかなり厄介!
いつも色々思い惑うのです。
「アマデウス」然り、「ポラック」然り、つい最近では「クリムト」然り!でしょ?
ああ、「レンブラント」を描いたいい映画があったけど・・・
でも、年末に第九を中心に据えたベートーヴェン映画と来ればやっぱり引き寄せられる。
この年末第9を聞く予定も無いし、映画の中の第9は圧巻という噂も聞くし?
日本人が何故「年末には第九!なのか?」という命題はさておき。
ところがピアノ教師をしている知人が試写会へ行ってきたというので「いかがでした?」
「ベートーヴェンの尊厳を傷つけられたようで腹がたったわ。あんな女性に指揮されたり動かされたり・・・そんなはず無いわ。」
でもある音楽家が新聞広告で「感動的だっ!」て長口舌振るってたし・・・やはり芸術家物は難しい。
なら自分でとりあえず見るさ!
ベートーヴェンの難聴が進んだ晩年4年間の物語でした。
ベートーヴェンはその音楽以外の人生については難聴の話しか知らない私ですから、物語としては多分一番に彼の人生の劇的なところを切り取ったのだろうなぁと思いますが、エド・ハリスの熱演にも関わらずこれは写譜師アンナの物語でした。
「師弟愛」という素直なものが主題なのだとすると、ベートーヴェンの物語にしないでも良かったのに・・・という気がしてしまいました。
難聴でも、外の不自由でも、とにかく助けが必要になった老芸術家を尊敬し、敬愛する弟子、しかも未だ女性の能力を振るう場の無かった時代に女性の弟子が献身的に尽くし、その結果芸術家はその才能を生かしきった・・・という話として。
それならベートーヴェンへの思いの強い人にも納得が行ったでしょう?そう思ったのはダイアン・クルーガーの美しさがこの映画では生きていた気がしたからです。
この人の「トロイ」のヘレンはちょっと違うという気がしましたが、この映画で天命を生かそうとする毅然とした凛とした女性の美しさを表現していたという点で感動したからです。
だからあの指揮の場に行く時のベートーヴェンの「色っぽいな」と言うせりふはなくともがな!でしたと思います。
ただ23歳のあの時代の女性にあの自信はどうでしょうね。
必然性を薄めるような気がしてしまいましたが。
もう少し人生と苦闘しながら音楽の道を志している女性なら、あのエド・ハリスが造形したような野卑な手ごわいベートーヴェンを理解できるのじゃないかと思ってしまうのですが。
でも、確かにやっぱり年末は第9だ!
全部ちゃんと聞くぞ!ベートーヴェン聞かなくっちゃ、久しぶりで・・・なんて、追い立てられるような気持ちで帰ってきちゃったのです。
エド・ハリスさんて「ポラック」「めぐりあう時間たち」今回の「ベートーヴェン」みたいな芸術家役は確実に印象に残って凄い!のですが、でも私が好きなのは「アポロ13号」「ニードフル・シングス」は別格として、「目撃」「スターリングラード」「ザ・ロック」「ビューティフル・マインド」のような作品に出てきた時の男の魅力みたいだわ。