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[映画]エディット・ピアフ~愛の賛歌

監督  オリヴィエ・ダアン 
出演  マリオン・コティヤール、シルヴィー・テステュー、ルイ・パリエ、エマニュエル・セリエ、ジャン=ポール・ルーヴ、ジャン=ピエール・マルタンス、ジェラール・ドパルデュー、マノン・シュヴァリエ、ポリーヌ・ビュルレ


「愛するため歌うため生まれてきたピアフ」
何のために生まれてきたってわかるってことは最高に羨ましいこと。だけどそれを全うするためには・・・!
ピアフの生涯については知っていることもあったけれど、この映画を見て知ったことは多分彼女の歌を聴く点では本当は意味の無いことかもしれない。歌を聴けばそれでいいことだから。彼女の歌はただ聴くだけですべてを語るから。
それでも何がって、一番衝撃を受けたのはエディットを演じたコティヤールさんの老け役。と言うかエディットの晩年の衰え方!
年齢的な幅で言ったらせいぜい15年。若い俳優さんの上手な老け方には最近メークの進歩もあって驚くことはなくなりましたが、この作品は衝撃でした。
コティヤールさんは32歳。ピアフが亡くなったのは47歳です。でも最後の療養中のピアフは今なら80代の老婦人といってもいい老け方でした。アルコールと麻薬と病気と事故、彼女の人生の重さが目の前にがーんと突きつけられた衝撃でした。47年の生涯が80年もの生涯に当たる?凄い女優さんだ!
歌手としてこんなにも愛され続けている人の、その賞賛を支えた激しい浮沈の人生がコティヤールさんの演技でここまで劇的に胸に迫ってくるとは!あのような地獄から天国までとも思われる彼女の人生こそが彼女の歌にある説得力と言うか魅惑と言うかの源泉だったのでしょう。天性の声と声量に付した。
改めてコティヤールさんの口を借りて響いてくるピアフの歌は重く心に滲み込んできました。
なぜならコティヤールさんは歌手だけを出現させたのではなく歌わずには生きられない女を出現させたからです。
映画的に言えば過去と現在の映像の切り替えが多すぎたり、そのせいで彼女の人生の軌跡が却ってわかり難くなっているような気がしましたが、反対にその劇性は浮かび上がってくるようでもありました。
母の、父の、祖母の、愛してくれた娼婦のその後?モモーヌの、側近?の出現、その他の多くの恋・結婚?ドパルディの演じた劇場主の事件、歌・曲を提供してくれた人々、人脈(マレーネなど)、彼女自身が生み出した歌など・・・知りたいエピソードの殆どの省略が惜しいような。
だけどその省略が一つの強いスポットライトを生み出してこの映画の背骨の強さになったとも感じられて、一つの悲劇としての味わいは深かったようです。深みが強さでした。
老婆のようになったピアフに提供された「水に流して」の歌詞は人生の終わりに足を踏み入れた私にも深くしみこんで味わい深い作品でしたが、あの歌曲を耳にしたピアフが生き返るように背筋が伸びるところで涙がこみ上げてしまいました。
歌に魂は添えても、添え続ける体がもう彼女には失われていたのだとどうしようもない、誰をも恨めない涙が流れるようでした。
心を揺り動かす歌というものがどんなところで生まれるのかということを思うと、歌はあだおろそかにはできない・・・

          

           

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