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[本]闇の底

薬丸岳著


大分前に「天使のナイフ」を読んだ後にこの本を予約したのですがよりによって今届いてしまいました。
「天切り松」にのめりこんでいましたからそのままのめりこんでいたかったのですが、取りに行かないと次に回って又今度は何時?になりますから。それにこの作家に前の作品で興味を持ったのも確かです。この作家は犯罪被害者の立場に立った作品を連続で世に送り出してきたようです。ある意味ジャストタイムで現在を切り取っていることは確かですし、戦後犯罪被害者になる確率が上がる一方で抑止力は全く働いていないというのが一般認識ですから。
この作品も実に興味深く読みました。
彼は犯罪被害者に非常に面白いと言うのは語弊がありますが独自の立場から目を注いでいます。
アメリカのドラマなどを見ていると「性犯罪者は矯正できない。」が常識のようです。性癖嗜好は矯めるのが本当に難しいことは想像できます。そういえば先日映画館で「リトル・チルドレン」という映画の予告を見たけれど、それも性犯罪者を扱っているようだったな。
アメリカでは今生犯罪者は居所を公表されて、住民たちも知っているといいますね。日本もこのまま子供たち(子供に限らないけれど)の被害が続くようなら考えてもいいシステムだと思って・・・現在の日本の恐ろしさに突き当たりました。
この作品で「子供に対する性犯罪殺人の抑止力をウタウ」殺人者は愛しい娘を持ってしまった性犯罪者で・・・彼の犯罪の動機を描くことでこの種の犯罪者たちの哀れさも恐ろしさも描いていますが、それ以上に結局彼らは矯正されないということを声高に言い募っているようでもあります。実際そうなのだろうか?家族にそういう犯罪者を持ったら、絶対そうは思いたくないだろう・・・祈る気持ちで矯正を願っているだろう。罪をあがなって再犯しないで・・・と。
統計だけでは決められないと一筋の光にもすがるだろう・・・とも思うと、この作家の描く世界の容赦の無さが胸に痛い。
だがやはりもっと痛いのは乱暴され殺されていった被害者とその家族で被害を阻止できるのだったらどんなに踏み込んでも許せると思う憤りもしっかり胸に生きています。
警官という道を選び又さらに選択を迫られた主人公の極限状態を考え出した?描ききった作家の現代社会の認識の確かさを痛々しく読みました。しかし、やっぱり表現の未熟さを思わないではいられないです。横山さんになれとは思いませんけれど、骨太な内容に緻密で微細な叙述が伴えばもっとこの作品は訴えただろうという気がして惜しいようです。言いたいことがいっぱいいっぱいで余裕が無いような?
それにしても現代の復讐譚は「モンテ・クリスト伯」の世界のように、カタルシスをもたらさないようですね?黒岩涙香さんの翻訳の「岩窟王」で始めてモンテ・クリスト伯を知った子供の頃は復讐は甘美に思えたのに。心って昔より複雑になったのでしょうか?それとも・・・?

          

           

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