[映画]クィーン
監督 スティーヴン・フリアース
出演 ヘレン・ミレン、マイケル・シーン、ジェームズ・クロムウェル、シルヴィア・シムズ、アレックス・ジェニングス、ヘレン・マックロリー、ロジャー・アラム、ティム・マクマラン
期待して見に行きましたが、期待以上でした。
と、書くともう付け加えることはないみたいですが、友人は開口一番「そっくりショーみたいだったね。」といいましたが、それは役者さんたちが非常に上手だったからです。
ヘレン・ミレンさんは確かにそっくりに演じていましたが、確かにエリザベス女王を雰囲気動作容貌全てなぞっていましたが、内容はフィクション事実そのままではない事をもちゃんと見事に演じていました。
あれ?変な言い方ね。つまり、女王のバルモラル城でのダイアナの死の報からの1週間を演じたのですが、特に後半の鹿との遭遇のエピソードなどは非常に象徴的に女王の人格を語るキーワードのエピソードですが、それを完全な実際の事実と感じさせるリアリティを持って演じきったというところでそっくりさんを超越できたかなと思ったのです。
違った容貌、そっくりさんメークでなく彼女の地の顔で演じたとしても、女王になったでしょう・・・と、思わされました。(彼女の「カレンダー・ガールズ」は忘れられません)
おかしなことに実際にはそんなには似ていないフィリップ殿下を演じたクロムウェルさんやチャールズ皇太子を演じたジェニングスさんの方がむしろ雰囲気的にそっくりサンに思えたくらいです。
トニー・ブレアさんもとうとう政権交代・・・本当にあれから10年もたったのだという感慨がありました。(マイケル・シーンさんはそれにしても一寸カワイ過ぎでしょう?トミーって感じ?)
遠い異国の出来事だったのに、昨日のように覚えています。
ダイアナさんの愛らしさも美しさも。
トニー・ブレア首相の若さに驚いたことも。
ダイアナさんの悲劇の時に「全ての根源はチャールズ皇太子にある。彼を王位につけるな!」なんて憤慨したことも。(だから演じたジェニングスさんには悪いのですが、この人卑怯者を演じさせたらあいそう・・・って、チャールズを演じるにはぴったりよって思っちゃいました。)
この映画は殆どを普通知りえない女王の私的な日常生活の場面で描いているので、絶対知りえないだろう事を実に淡々と時の経過を積み上げて、見てきたかのような「絶対の事実」にまで昇華させてしまったという気がしましたが、それにはあの北の城とそこを取り巻く王室所有地の圧倒的な自然の厳しさと美しさも預かっているかもしれません。
内情ものの覗き見風の映画になりそうな際物題材だと思ったのに(実際にそんな面白さもちゃんとありましたが、ダイアナさんの映像が却って際物に落ちるのを食い止めていたような)非常に風格を感じさせる映画になっていてエリを正して女王陛下にブレア夫人のへたくそなよろよろ挨拶ではなくきちんと膝を追って敬意を込めて貴婦人風の会釈をしたいものだと思わされました。
特異な立場の女性の特異な1週間の心理を見事に映像に定着したと、素晴らしく緊密な映画だと思いましたが、わたしの中の野次馬根性も大きな顔を出してしまいました。無理ないでしょ?
と、いうわけで?日本の皇室と様々な点を比べてしまいましたね。(内容は遠慮します)
日本では、はなっからこんな内実ものが出来るかどうかということはさておいても・・・王(皇)室の女性たちはいずれにしてもなぜかお気の毒な・・・と。
それに対してフィリップ殿下にしてもチャールズにしても彼女たちに比べると妙にお気楽?に見えましたが。エリザベス女王とダイアナ妃への時代、美智子皇后から雅子妃への時代、この間には大きな時代の溝が厳然とあるのだなぁ・・・そしてそれを取り巻く人々の王室への意識にも・・・という事実の重さでしょうか。
ところどころに思わず笑ってしまうような王室と平民のギャップを揶揄するくすぐりもあって社会風刺映画としての面白さもありました。