[映画]硫黄島からの手紙
監督 クリント・イーストウッド
出演 渡辺謙、二宮和也、伊原剛、中村獅童、加瀬亮
「父親たちの星条旗」に次いでこの映画!
前作以上に感動した!
一緒に見た旦那は「始めから終いまで重かったなぁ!」
戦争の悲しさ、むなしさ、やりきれなさ・・・余すところなく表現されていた。
「ラストサムライ」でやっと外人による日本人を扱った映画が見られるものになってきたな・・・と思っていたが、この映画はその枠を超えていた。
知らなければオール日本人スタッフで取られた映画だと思うところだ、細部に至るまで。
何で日本の映画人はこのような映画を今まで作り得なかったのだろうか?ちょっと無念な感じ。
あの戦争の無謀さ無知さがやりきれないほど胸に迫ってくる。
栗林中将、西中佐・・・これほどの知性や人格もが飲み込まれていった戦争へ傾斜して行く世論、時流!こんな恐ろしい物は無い。
そこが戦争のやりきれないところだ。
彼らの知識を戦闘でしか生かせなかったことがやりきれない。
「5日で終る戦いを36日間凌いだ」というコピー。
一日でも長引かせればそれだけ本土への空襲を遅れさせられる・・・そのために尽くされた人智の悲しいこと。
こんなにさらりと戦争をしている当事者たちの異常を淡々とさらして見せてくれた映画は無いかもしれない。
靖国の事だって何で靖国が問題になるのか若い人たちに考えさせるかもしれない、下手な論調の新聞なんかよりこんな映画の方が。
どっちかが悪者だったり、どっちかに英雄が居たり、どっちかの立場にしっかりたっていたり・・・して描かれた戦争物は幾らでもあったが、この映画二部作では実に公平にどちらの側にも立脚していない。だからこそ戦争はむなしいだけのものだと納得できる。
日本人の投降者があっさり銃殺されるところ、日本人に捕まった米兵が虐殺されるところ、米兵を看護させるところ、否応無く自爆させられるところ、日本人の負傷者が米兵と並んで並べられているところ・・・変に力も入らず同じトーンで見せている。これが人間なんだと納得させられる。
西中佐の南方での戦死は知っていたが、それが硫黄島だったとは・・・。
この映画の視点となった元パン屋の兵士の熱くなり過ぎない視線が淡々と事実を突きつけて、この映画を普遍的な戦争否定映画に昇華するのではないかと思った。
彼の持つ庶民の明るさ逞しさがかすかに匂っていい感じ。
私の今年の洋画3本を選ぶとすればまず第一の指・・・と、思って、はて?これは洋画なのかなぁ?と思う。凄い人だなぁクリント・イーストウッドという人は。「ミリオンダラー・ベィビー」もそう思ったけれどこの人の立っているところは好きだなぁ。好感が持てる。