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[本]アトランティスのこころ


スティーヴン・キング著


初めてキングさんの本を読んだのは先にも書きましたが、「ローズ・マダー」です。その時は映画化(映像化)していない作品をと思って探しましたが、この本はアンソニー・ホプキンスの映画で見ました。それもほんの偶然に、題名とアンソニーの名で惹かれて「録画」しておいたものでです。「SFファンタジー」かと思ったのに。
見てから原作がスティーヴン・キングだと知りました。
彼の作品では「スタンド・バイ・ミー」「グリーン・マイル」に続いて気持ちよく見られた作品でした。なにしろアンソニー・ホプキンスさんが魅力的な老人を演じて(この人の目は温かいとなったら・・・本当に温かい!でも違うとなったら・・・!)、少年期を描いた心温まる作品でしたから。本当にいい映画でしたよ。母親役の女優さんがいかにもそれらしく?って、少年と母親の微妙な関係を表現していて・・・「見で?」のある映画でした。だから次にキングさんを読む時はこれって決めました。
映像で見る限り老人テッドには超能力?(不思議な力)はあっても恐ろしいものの様ではありませんでしたし(彼自身は悲しい宿命の下に身を潜めていたようでしたが?)、むしろそれより少年の幼き日の悲しみやテッドとの交流で得たもの(父性とか父の発見とか友情・絆、本への感性、能力?等)、そしてその成長が全体を覆う超自然的な不安の下でさえも、どちらかというと甘悲しい映画でしたから、これならいいでしょう?
ところが小説はとても長くてボビーの少年期の話は全体の構成の中の2分の1ぐらいでした。結果的には映画は実にウマイところを選び取って脚本・監督が見事だったということでした。
さて、本の方の話です。
この大作は・・・最もキングにとっては大作のうちに入らない?・・・5部構成、上巻1部「黄色いコートの下衆男たち」下巻2部「アトランティスのハーツ」3部「盲のウィリー」4部「なぜぼくらはヴェトナムにいるのか」5部「天国のような夜が降ってくる」
映画はその1部と5部の終わりをつないだもので、残りは省いてありました。私が面白く読めたのも丁度その部分でした。それだけで十分物語り読みには楽しいわくわく小説になっていますが、全部通して読むとここ40年間のドキュメントの色合いを帯びるようです。どの巻にもポイントになる「不思議」が微妙なかげりを帯びて支配しています。そこがキングなのだろうな・・・と、思い始めています。
そしてそこが読者をひきつけて止まないのだと。
ひょっとしたら「映画で見たから読むの止めよう、キングさんは。」・・・と思っていた私が方向転換するきっかけになるかも?
それは厭なんですよ、実のところ。何しろキングの作品はどれも長いんですもの。大抵は怖いし!
「アトランティスのこころ」は時代が人間に及ぼしたものの方がキングの味付けより怖くって、結局人間ほど恐ろしい物はないのだと今気が付いたところです?
60年代半ばに大学生になった私はあの時代の空気を覚えています。といって、私は何をしたということも無かったのですし忘れかけてはいますけれど(殆ど忘れていた!)、この作品を読んでいるとあの頃アメリカで私と平行な時空を歩いていた学生や若者の痛みがどれだけのものだったのかが、キングの多用する風俗・映画・音楽の間からにじみ出てきてひどいケロイドを見せ付けられるようです。
「ヴェトナム帰還兵は癌になる」「ヴェトナム帰還兵は鬱になり、酔っ払い、自殺する」「ヴェトナム帰還兵は歯が悪い」「ヴェトナム帰還兵は離婚する」そして最後の親指「ヴェトナム帰還兵はジッポーを持ち歩く」までの最後の間にサリーが思うアメリカの姿!
今度の戦争の後ではどうなるのかと思うと・・・それが津波のように世界に及ぼす「文化」の事を思うとね。でも1部があって5部に繋がるから、キャロルと一緒に心の底から悲しむ涙を流さなくてもいいのかも知れない。
1部で終らないのが・・・キングなんでしょうね(又言っちゃった)。
「自分の部屋が前より狭苦しく見えた。帰り着く部屋ではなく、立ち去るべき部屋という感じだった。・・・ボビーは自分が成長しつつある事を認めた。頭の奥で苦々しげに反対している大きな声があった。ちがう、そうじゃない。ちがう、ちがう―声はそう叫んでいた。」
ねぇ、キングさんって10代の私のそばにいたんでしょうか?
こんな文章を見つけるために、又キングさんを読むんでしょうね。
ボビーの手を離れてからぐるっと回ってボビーの元に戻ってくる魔法のかかったグローブを手にするのは誰なんでしょう?でもそれにはテッドの温みも不思議ももれなく付いてくる?

          

           

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