[本]用心棒日月抄
藤沢周平著
先日新聞の広告に「藤沢周平さんの世界」を作品ごとに地図や資料を載せた小雑誌が発行されるという広告が入っていました。
全部で30冊ほどになるのだったかしら?
藤沢さんの人気は凄い!と、改めて感心しました。
私も読みながら海坂藩の地図作ってみようかなぁ・・・と、漠然とですが考えた事があるくらいです。
藩主の家系図とかもできるんじゃないかなぁ、なんて。
やっぱり、やるよねぇ・・・ファンは!またはそれで商売できると思う人いるわよねぇ・・・!
実際いっぱい出ていますよ。でも又出るようです、それもシリーズで!
私は攻略本の類は買わない主義です。それって一種の攻略本でしょ?それなのになぜか購買申し込んじゃったんですねぇ・・・なんでだろう?
最初が「用人棒・・・」だったからかなぁ。*訂正「蝉しぐれ」が1号、用心棒は2号でした。
青江又八郎と出会ったとき、私は凄く嬉しかったのです。
その後、神名平四郎とか立花登とか伊之助とか魅力的な主人公何人にも出会いましたが、その中で最初に出会ったのが彼だったから特別な思いいれがあるのです。
周平さんは本当に沢山の魅力的な人物を生みだしたと感嘆し、そこから得られた沢山の楽しみに物凄く感謝しています。私の老後の?とっときのお楽しみのつもりです。
これまでどれだけ楽しませてもらったことでしょう。
青江さんはそれまで幾つか読んだ短編の主人公たちとは違って貧乏にいつも鼻面を引き回されていましたけれど、又危険に付き纏われていましたけれど、底に流れる明るさと逞しさは庶民のものでした・・・という気がしませんか?
それくらい地に付いていて生活があって敏くて気も心も回って・・・機転が利くと言えばいいんだ・・・一つ一つの挿話の解決が痛快で心温まる何かがあって・・・重層になったモチーフがしっかりしていて、いやぁーなんて素晴らしい小説だろうとすっかりファンになってしまいました。
だからこれ1冊で終らないで続きがあると分かった時は狂喜乱舞!でした。
だって、この話はこの1巻で実に見事に完結していたんですから。
「えー、どういう風に続けたんだろう?」でした。
で、正直に言っちゃうと、私の中で青江さんはこの1冊で終わりにするぞ!絶対終ったんだぞ!2・3巻は無かったんだぞ!と、言い聞かせています。4巻は読むのをためらったままです。
凄く惜しいのは1つ1つの「用心棒挿話」だけは残しておきたいという誘惑がそれでも私の心をつかんで離さないんです。
問題はこれが現代の単身赴任サラリーマンの話に置き換えられるような気がするからです。
そして私が付いてゆきたいのに付いていけない妻だという気がすることです。
ここで引っかかっちゃうんです。
由亀さんの事を考えちゃうんです。だから「日月抄」は良いのです。結ばれる望みは儚かったのですから、私は祈って読んでいればよかったんですからね。
でもその後は?彼女はおばばさまに仕え、留守を守り、夫を案じて日夜無事の帰還を待ちかねて、寂しさに耐えているわけです。
男は外へ出れば、同僚も仕事先もあり人との出会いも多い・・・危険もあるけれど絶対家にいるより生きがいがあるよ!
一緒に心を通わせて仕事をする人は多いでしょう・・・だからここで許せないんですね。夜鷹のおさきさんの挿話は許せますよ、なんとか。
でも、佐知さんはいけません!心を通わせる状況なのは百も承知でいやです。どうしてもいやです。心が通っているからいやです。
由亀さんはただでさえ不安の中に居続けて、健気に耐えているのに・・・やっぱり駄目です。
といって、佐知さんに文句はありません。
有能なこと、いじらしいこと、女性らしい全てのしぐさ、行動力、全く文句なしです。だからいけません。
由亀さん太刀打ちできないじゃありませんか、遠く離れて対抗する術無いんですもの。
それなのに3巻は酷に過ぎます。時代小説というより手馴れた男性読者向けの剣豪小説風?になっていくようで。
というわけで折角続きがあるにもかかわらず青江さんは「用心棒日月抄」で私の中では終わりなんです。
でもその1冊は大事な1冊なのです。