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[本]あやし


宮部みゆき 著


さてさて、妙なめぐり合いで読んでしまいました。
一寸前になりますが、浅田次郎さんの作品を2冊読んで、又何か読もうかな?と思ったら、グッドタイミングで新聞に広告が。
浅田次郎著「あやし、うらめし、あなかなし」明日発売!
この題、ぐっと来るじゃありませんか?
私の心の琴線をキンとかき鳴らしましたね。
字づらも、響きも、平安朝っぽさも、・・・読みたい・・・読むべし!
で、即、図書館検索。ヒット無し。
あらら・・・まだ発売されていないから?予約は行かなくちゃならないのかな?と、思いながら発売翌日・・・申し込みできました・・・500人目!「?」えええっ?
改めて浅田さんの人気の実力?の程を知りましたねぇ。
でもその代わりに「あやし」で検索に引っかかったのが宮部さんのこの本でした。
「あやし」・・・うーん、時代小説っぽい!時代小説だ、時代物に間違いない!
それも、お初ものに近い感じ?本所・幻色系?と言うわけで、読む本が途切れた数日前に申し込みまして、違う分室にあったので届くのに2日かかりましたが、時代小説に間違いはありませんでした。
それも実に怪しい「あやし」でした。
正直読むんじゃなかったなぁ・・・と、思いながら読んでいました。
今までの宮部さんの本の中では一番「毒っぽい?」と言いますか、私的には「不」とか「非」とかの漢字を使って表現したいって感じでした。
この本の感想に適したキーワードを並べよ!と、言われたらもう素直に「恐い」「怖い」「畏い」「懼い」に次いで「不気味」「嫌」「不気味」「嫌」。
ですが、日本の昔ってこういうものに満ちていたのかも・・・なんて、読み終わったら思っていました。
なんか、奈良時代ぐらいからこっち・・・「怨霊」跳梁していたじゃないですか?最近は聞きませんけれどね。
勿論この物語に出てくる何者かは怨霊なんて恐れ多い尊いものではありませんが。
長く使っていた道具なんかも粗末に捨てると・・・化け物になる・・・っていう類の日本の物の怪・・・「何かを恐れる気持ちと、その気持ちが生み出す何か」と、「やましいと思う気持ちとやましさが生み出した何かと」
だから、何かにまたは誰かにやましくなるような事をしてはいけないし、何かを恐れて慎む気持ちを忘れてはいけない・・・っていう今はもう忘れられた「心の緊張感」みたいなものを思い出しました。
そういえば先だって我が家に来た客人が「往生要集」を持っていました。
「大昔お父さんが読んでいるのを見たっきりだわ・・・お若いのに珍しいものを読むのね?」と、言ったら「子供たち(小学生)に地獄を教えておきたくて。」とおっしゃっていました。
凄く頷いてしまいました。「そうだ!そうよ!」
地獄が無くなってから?日本人は恥や、愧や、辱を忘れて自分だけが良ければよくなったんだ・・・って、久しぶりに思い出させてもらいました。
「あやし」の中にはそういう忘れられた「恐れなければならないもの」「畏れなければならないもの」「懼れなければならないもの」が詰まっていました。
この短編集の中では「安達家の鬼」という話だけが好きです。
お母さんの気持ちとてもよく分かるような気がしましたし、お嫁さん以上に多分頷いて聞いていましたよ。私の鬼はどんな目をしているのでしょう?って。
宮部さんもこの本の中に作家の内なる「灰神楽」の灰のようなものを詰め込んだんじゃないかなぁ・・・って言う感じを受けました。
出来得れば、人は感情を凝縮して煮詰めて重石を載せて圧縮・抽出するようなことは避けて、さらさら生きたいものだと・・・特に「うらみ・ねたみ・そねみ」などはさらっと捨てて・・・と、思ったことでした。
出来得れば・・・ですけどね!

          

           

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