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[本]博士の愛した数式

小川洋子著


映画を見た時とても感動したので、きっと「原作はもっと素晴らしいに違いない!」と思いました。
それで帰ってきて直ぐ図書館に予約したのが一昨日ようやく届きました。
期待に違いませんでした。
久しぶりに、きちんと抑制された明快で美しい日本語の物語でした。
てらわず押し付けず、心地よく鼻の奥のじんわり感と共に心地よい豊かな読後感のある素晴らしい小説でした。
私は心密かに絶賛いたしました!(私に絶賛されてもね?)
「東京タワーも良かったろう?」って?
「ええ!」でも、あれは文体も面白く、感動的でしたが、その感動に「直球勝負!」みたいなところが有ったでしょう?
この「博士の・・・」は練り上げられ繊細に構築された緊密な世界がなんともいえない優しさで心の中に浮遊してくる・・・山形の緩い曲線を描く・・・そうね、そんな球筋とでも言えばいいのでしょうか?
面白いわね、豪腕江夏の懐かしいエピソードがちりばめられているのに・・・それがかもし出す雰囲気は静かな美しさだなんて・・・。彼らの物語に精彩を与えていた江夏の挿話が私にセピア色を帯びた懐かしく、帰らぬ日々を思い起こさせました。
限られた時間の中で無限の世界を持つ博士と、素直にその世界を理解しようと寄り添う主人公の優しい心根と、きっと持って生まれたに違いないと思われるような敏い洞察力で博士に向き合うルートとの織り成す世界の不思議は博士の愛する静かさで読む人の心に染みとおってくるようです。
こんな世界を繰り広げる人ってどんな心をお持ちなんでしょうね?
小説と数字って思いもかけない組み合わせで、こんなにも詩的な情緒がかもし出されるなんて、なんかワクワクしましたね。
小川洋子さんという名前は知っていましたが今まで読もうかなと思ったことがありませんでした。
又一つ泉を発見したのでしょうか?
それにしてもと私も深沈と?自分の数学の歴史に向き合ってしまいました。博士のような方に数学を習っていたらどうなっていたでしょう?
私はこの本を食い入るように読んでいても「フェルマーの最終定理」とか「オイラーの公式」とかのことも、その美しさも、博士の書き綴る沢山の数式に見えるレースのような美しさも、本当のところ分からないのです。
それでもこの登場人物たちが跪く数字の美しい世界が存在し得るのだという事を、この本を読んでいる間一度たりとも疑いはしませんでした。彼らは私の中で∞に広がり、そっとしまい込まれて永久に忘れ去られることは無いのだと確信しています。
それにしてもなぁ・・・中学3年の時までちゃんと通信簿で5を貰っていたのに高校のどこで分からなくなったものだか・・・それすらも分からない私です。

          

           

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