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[本]堪忍箱

宮部みゆき著


「ブレイブストーリー」を予約しに図書館へ行ったら見つけました。
宮部さんの特に時代物の作品が好きですから、「読んでいないのがあったぞ!」と借りてきたわけです。
8つの短編が収録されていました。
この短編集は実に色々な感情をそれぞれに抱かせてくれました。
読後感の良いものばかりではありませんでした。いえ、読後感の良かったものがあったかしら?
特に表題になっている「堪忍箱」「十六夜髑髏」は堪りませんでした。
なんとも気の重いやりきれなさがありましたが、この短編集の中に心からくつろげて楽しめる作品は無かったのです。
宮部さんの底の知れない、間口の広い?小説世界をまた味わうことになりました。
どの作品もが闇を秘めています。この闇は人間の「心の病み」にも通じるようです。
読み終わって隣を歩いている人もこんな闇を抱えているのかもしれないとふと思った時、あぁ、この作品も時代を借りているだけで現代なのだと思いました。
それどころか私自身にも覗き込めば蠢いているような「病み」がありそうです。
ニュースを見ると信じられないほど世界中が病んでいるのではないかと思いますが、いえ、世界中なんてものではない、そんなご大層な世界に広げなくたって人は元々心の中に闇を持っていてそれが何かの形で現れるのが人の「病み」なんだ!
人からそっと出た一つ一つの「病み」がなんかの拍子でくるっと纏まるといやな事件が起きて、ついには戦争のようなものに変化してゆくんだ。
なんてことまで考えてしまいました。
私だって、覚えがあります。「てんびんばかり」なんて、大抵の女が心の底に秘めている魔物ではありませんか。
でも大多数の人はお吉なんだけれど、お美代みたいに後ろめたい人生をつい選び取っちゃって、落ち着かない人生を歩くことになる人間もいて、又、お吉がしなかった選択をする女も居るだろうし。
それはそのまま、会社や社会で男たちも繰り広げているささやかな暗闘と似たものではないでしょうか。
この作品群で見せられる闇は誰にでもありうる病みで、「今」という時代が生き難くなっている感じがするのは、その闇を心の中に包みきれない人が増えているからなのじゃないか・・・なんて。
人が隣の人に注意も興味も優しさも抱かなくなっているから、歯止めに成るものがどんどんなくなっているから・・・。
お吉だってお美代だって大家さんが居なかったら・・・?とか、「かどわかし」の小一郎だって、箕吉が心を残してくれていなかったら・・・?とか、「謀りごと」だって長屋の連中がお互いを全然知らなかったら・・・?とか、「お墓の下まで」だって、お滝が過去にあんな事をしていなかったら・・・あの子達は・・・なんていう風に関わってくれる人が回りに居るから閉じ込め切ったり、癒し治したり出来たんだもの・・・と思いながらも、じっとりといやな感じのものに纏いつかれたような読後感でした。
「お墓の下まで」は皆普通に会っていたらよい人ばかりですのにね。
この作品ばかりは悲しみが勝ちました。
どんな闇を抱えてもまっとうに、健気に生きていくことは出来るんです。
それに最後の「砂村新田」のお春と母親はいい感じでしたね。
私も優しかった母親をつい思い出してしまいましたが、お春の心遣りのつつましい優しさ控えめな利発さは人間というものに希望を抱かせられます。
最後の短編で少しほっとさせられて、また宮部さんに思うように私の心を操つられちゃったって思いました。
心に黒い漣を起こさせられて、一寸鎮められたような。

          
           

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